テキスタルデザインスタジオ「WHOLE」に訪問 / 恋するパリ通信〜

作成日:
更新日:

蚤の市で見つけた70年代のライフスタイル本で、植物や野菜から布を染める方法を見てからというもの、インディゴ染めにも興味がわいて、ワークショップをやっているところをパリでも発見! 植物染めとフランスの繊維を専門にするテキスタイルデザインのスタジオ「WHOLE」に行ってきました。

染め見本台帳のページをめくると、植物でこんなに美しい色に染まるのかとうっとりしっぱなし。この台帳からして、まるでひとつの作品のよう。ちなみにこのページはアボカドの種などで染めた布たち。

WHOLEがあるのは13区。300㎡のお庭があって、ここがパリということを忘れそうになるほど気持ちのいいスペースです。ここを主宰するのがオーレリアさん。

WHOLEを立ち上げたオーレリアさん。後ろに映るタイニーハウスで染めのすべての工程を行う。

「WHOLEを立ち上げたのが2012年~2013年にかけてのこと。それまではファッション業界でテキスタイルデザイナーとして10年間働いたのですが、ファッション業界に疑問を持ち始めたこともあって独立しました」 とはいうものの、ファッションやテキスタイルはやっぱり好きだというオーレリアさんはその後、尊敬する染色家MICHEL GARCIAさんから染色を学ぶ機会を得たそうです。

ホームコレクションをスタートしたときに作ったクッションは、今も人気のアイテム。やさしくて華やかな色合いが本当に素敵。

ベジタブル染めに魅了され、その後は染めや色にこだわるテキスタイルを使ったホームウェアブランドをスタート。クッションやスカーフなどの小物を作るようになり、2016年にはパリの11区にアトリエ兼ショップをオープンしました。世界のインテリアデザインのトレンドを牽引する国際的な展示会「MAISON & OBJET(メゾン・エ・オブジェ)」 に出店するとたちまち評判に。「たくさんのお店から仕入れの希望があったのですが、アトリエですべて作業をしていたので作れる数にも限りがあって、自分たちが置いてもらいたいお店にしか売らなかったんです。自分たちのお店での販売とそこでワークショップをすることでブランドを広めていきました」

左:乾燥させた茜の根っこや玉ねぎの皮、花びらや木の皮など染めの材料。/右:タイニーハウスの窓からの眺めもまるで田舎にいるよう。

玉ねぎの皮やアボカドの皮や種など、簡単に家庭で手に入る野菜から染色したり、茜の根っこを乾燥させたものを使った染色やインディゴ染めが人気を博したそう。また、草花を押し花のように生地にプリントするエコプリントと呼ばれる手法や、タイダイ染めやしぼりなどのワークショップも、パリジェンヌたちを魅了していきました。

左:自分たちで育てた植物を染めに使う。/右:茜が育ってきた! 茜は根っこを染料として使う。

転機が訪れたのは2019年。パリ市のプロジェクトで保育園に隣接する空き地300㎡を貸し出すためのコンペティションがあり、庭で植物を育て、染色のアトリエにするWHOLEのプロジェクトが採用されたのです。コロナで思うように進まないことがたくさんあったとのことですが、念願のタイニーハウスが完成。

タイニーハウスは心地のいい空間。縫う工程もすべてここで行う。

「このタイニーハウスはもし引っ越すことになったら解体して運ぶことも可能なんですよ。この小さいアトリエですべての染めの工程を行っていて、庭で育てた植物から染色をして庭に干し、ここでミシンを踏む。クリエーターブランド、子ども服、ビックメゾンまでいろいろなコラボレーションの話がきますが、小さいのでやれることに限界があります。無理をせず自分たちにできる範囲でやっていきたいといつも思っています」

コラボレーションして作ったスカーフは大人気。

こちらは日本人にもなじみの深い藍染めの液。

翌日のワークショップのために、布を一度重曹で煮洗いし、下準備をする。そうすることで布にムラができることなく染まる。

そう語るオーレリアさんなのですが、最近なんとレユニオン島に引っ越しをして、パリと2拠点での活動を始めたのだそう。「レユニオン島はパリにはないトロピカルな花や植物があふれている魅力的な島。やりたいことがたくさんあって刺激的な毎日を過ごしています」インド洋に浮かぶ島とパリとの2拠点生活だなんて、素敵すぎる! 今後はレユニオン島にもアトリエ兼ショップを立てる計画などいろいろなプロジェクトが動き出しているそうで、そこからどんな作品が生まれるのかワクワクしつつ、私もワークショップに参加したいと申し込みをしました。お庭の花が満開になる季節が楽しみでなりません。

https://whole.fr
Instagram:@ourwholeconcept

TAKANAKA MASAE
雑誌や広告でファッションコーディネーター&スタイリストとして活動中。
パリに住んではや20年、毎日自転車でパリの街をパトロールしています。
Instagram 移動花瓶屋さん @cabin.e.paris パリの日常 @massaetakanaka

関連記事

最近読んだ記事

おすすめコンテンツ

手芸・手づくりキット、ハンドメイド雑貨のお買い物はこちら