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極細のレース糸で編み、繊細な着色をほどこして作られた小さな草花たちは、うっとりするほど緻密でロマンティック。独特の世界観がファンを魅了してやまないレース編み作家の中里華奈さんに、その独創的なスタイルについて、日々の創作やモチーフへの愛について、たっぷりとお話を伺いました。
お花屋さんに憧れた少女がレース編み作家になるまで。
取材中、レース編みを実演してくださった中里さん。極細の糸がかぎ針とダンスをするように細やかに動きながら姿を変えていく様子は、まるで魔法のよう! いつの間にか目の前には、小指の爪ほどの小さなお花が見事に咲いてました。
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和裁をされるお母さまのもと、手づくりを身近に感じながら育った中里さん。出産後はお子さんのための編み物を楽しむようになり、少しずつ極細のレース編みの世界に魅せられていったのだそう。
「レース編みは使う道具が少なく、どこでも気軽に作業ができるのと、糸とかぎ針だけでこんなに豊かな表現ができるんだという驚きもあり、どんどん夢中になりました。また、昔から小さなものや繊細なものが好きだったので、理想のイメージを追い求めるうちに、80番や100番の極細の糸を使うようになりました」
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そして次に発見したのは、色付きの糸を使うのではなく、編んだ後に筆を使って着色するという独特のスタイル。
「いろんな色の糸を使ってみましたが、なかなかイメージ通りに編めなくて。ふと思いつき、白い糸で編み上げたモチーフに染料をのせてみたら、絶妙な色合いやグラデーションも表現できるし、絵画のように自分の感性で大胆に色をつけることもできる。その自由さがうれしくて、すっかり定番の方法になりました」
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桜やスミレなどの身近な花から、時計草やねむの木などの個性的な花まで、中里さんの編む草花は実に多種多様。デザインで心がけているのは、自分自身が編んでみたい、そして身に着けたいと思えるものであること。レース編みを通してたくさんの草花と出会えることが、いまとてもしあわせなのだといいます。
「初期は漠然とした『お花』的なイメージを編んでいましたが、だんだんと実在する草花を意識するようになりました。知らないことは図鑑で調べたり、観察できるものは観察したり。編んでいる間は頭の中はずっとその草花のことでいっぱいで、どう編めばこのかわいさを最大限に伝えることができるだろうと考えながら、編んではほどき、編んではほどきの繰り返し。夢中で手を動かすうちに、作品が少しずつ頭の中の理想のイメージに近づいていく過程もとても楽しいです」
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作品をハンドメイドイベントに出店してみると、瞬く間に大人気に。発表を重ねるうちに編集者から声がかかり、初めての書籍『かぎ針で編む ルナヘヴンリィの小さなお花のアクセサリー』を発表。こうして唯一無二の作品世界を深めていきながら、現在は個展や書籍の出版、編み物教室の講師など、次々に活躍の場を広げています。
「私の子どものころの将来の夢はお花屋さんでした。年月を経たいま、『お花を編む』という形で子どものころの憧れがかなったような気がしています」
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「リアル」と「リアリティー」の理想のバランスを探って。
どの花も、まるでたったいま摘んできたばかりのように生き生きとしていながら、ただ写実的なだけではないファンタジックな愛らしさに胸がときめきます。ほかにはない独特の表現は、いったいどのようにして生まれるのでしょうか。
「感覚的な話になりますが、『リアル』と『リアリティー』のバランスはとても大事にしていることのひとつです。モチーフとなる植物のことはとことん調べるし、本物らしさも意識しますが、実際に身に着けたいと思えるかわいさを追求していくと、色も形もただ自然のままの姿に近づければいいというわけでもなくて。自分なりにそのさじ加減を探りながら、日々モチーフと向き合っています」
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そしてもうひとつ中里さんが意識しているのが、「作品に思いを込めない」ということ。意外にも思える言葉ですが、その理由には、大好きな草花に対する中里さんの愛と尊敬が詰まっていました。
「幸福感だったり、個人の思い出だったりと、お花はつい想いを託したくなるモチーフですが、どんなときも、お花はお花のままで、そこに在るだけで美しいもの。そしてそんな姿に私自身は感動したり、救われたりすることが多いので、できる限り作品に個人的な思いは込めず、ありのままの草花の無垢な存在感をそのまま表現できたらと思っています。それに、私の作品をお迎えしてくださった方や私のデザインを編んでくださった方が新たに思いを込められることはとても素敵なことだと思うので、そこを邪魔したくないなという気持ちもあるんです」
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今回、クチュリエのキット監修を手がけてくださった中里さん。レース編みのコツをお聞きしたら、感覚的ながらとても具体的なアドバイスをいただきました。
「糸が細い分、ちょっとした力加減で編み上がりが変わってくるので、『引き抜いた糸がどこへいくのか』をイメージすると、目が緩まない適度な力の入れ方がつかめてくると思います。あとは、とにかくたくさん編むこと! 私の教室の生徒さんも、編めば編むほど本当に上手になっていかれるので、毎回感動しています」
編んだことのない美しい草花が、世界にはまだたくさんあるという中里さん。レース編みを介した草花とのしあわせな関係は、これからもまだまだ続きます。
Lunarheavenly[ルナヘヴンリィ]さん監修のキットはこちら
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「繊細なレース糸で編み染める 小さな花束ブローチの会」
うっとり心奪われるレース編みのミニブーケのブローチ。繊細な綿100%の白いレース糸で編み上げたお花や葉のパーツをやさしく着色して色鮮やかに咲かせます。緻密で独創的な世界観がファンを魅了してやまない待望のキットです。
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ルナヘヴンリィ 中里さんからのメッセージ
作りやすい大きさと身に着けたくなるデザインにこだわりました。編んでみたい気持ちを大切に、ぜひトライしてください!
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ルナヘヴンリィ 中里 華奈さん
レース編み作家。2009年にルナヘヴンリィを立ち上げ、個展やイベント出展、カルチャースクールの講師など幅広く活動中。著書に『かぎ針で編むルナヘヴンリィの小さなお花のアクセサリー』(河出書房新社)、『ルナヘヴンリィの大人のかぎ針編みアクセサリー』(翔泳社)など。現在6冊目の書籍を製作中。
Instagram:@lunarheavenly
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