
残してくれた手の思い出
もう着ることのないセーターを2枚持っています。それは子どものころに父方の祖母が編んでくれた棒針編みのセーターで、一枚は紫色、もう一枚は白。どちらも太い毛糸で編まれたざっくりしたもので、当たり前ですがとっくにサイズアウトしています。

祖母について思い出せるいちばん古い記憶は針を持つ手のこと。母方の祖父が急に亡くなり、まだ幼かった私と兄弟は父方の祖父母の家に預けられました。
祖母は葬儀用の服の用意がない私の兄弟のために黒いネクタイを作ってくれました。 東北に住んでいた私が東京に住む祖母に会えるのは年に数回しかなく、私は少し緊張していたと思います。それでも祖母の横に座って、すっすっと動かされていく針の動きを隣で見ているのがとてもおもしろかった。祖母の手の中で絵本に出てきそうな小さなサイズのネクタイがみるみるできあがっていきました。

祖母が亡くなって随分たってから、母から「懐かしいものが出てきたよ」と渡されたのが最初にお話しした2枚のセーターです。ほつれたり少し傷んだりしていたけれど、さわってみると、祖母の手の跡が不思議と伝わってくるようでした。きっと離れて暮らす孫が今どのくらいの身長かなどを想像しながら編んでくれたのだろうなぁ。祖母の人生にそんな時間があったのかと思うとなんだか不思議でした。注いでもらっていた愛情に今更のように気がついてたまらない気持ちになりました。

祖母はどちらかといえばシャイな性格で言葉の愛情表現は多くはなかったけれど、いつもあたたかかった。どんな写真を見返すよりも、そのセーターは、祖母の静かな温もりにもう一度会わせてくれるものでした。そしてきっとこの先も私をあたため続けてくれるのだろうと思います。

イラストレーター 須山 奈津希
鉛筆の線画を中心に書籍や雑誌、広告などでイラストを描いています。東京在住。朝のさんぽと夕焼け見学するのが日課。
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