福田とし子さんがみんなに愛される理由とは〜前編〜

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飽くなき好奇心がものづくりの原動力

チャーミングな人柄そのままのかわいい作品で『クチュリエの種』を彩り豊かに盛り上げてくれている、手芸作家の福田 とし子さん。その感性の源をひもとくと、幼少期にさかのぼります。

福田さんが育ったのは、お父さまが海外に行くたびにユニークな雑貨をお土産に買ってきてくれたり、洋服はすべてお母さまのお手製という家庭。三姉妹のいちばん上で、姉妹そろって着せかえ遊びが大好き。紙に洋服を描いて着せかえのパーツを作ったり、漫画を見て着たい服をデザインしたりする子どもだったそう。福田さんが「感性は学ぶものではなく身に着くもの」とおっしゃるゆえんはここにあるのだと納得できます。

 

作業台のまわりにある針山などの手づくりアイテムもおしゃれ。

デザイン学校を卒業後、創作着物のデザインに始まり、カーペットなどのインテリア用品の図案を描く仕事に就きます。「飽き性なので、ある程度習得すると別のことがやりたくなって」と、好奇心ゆえに仕事の幅を広げ、その後、結婚を機に仕事をはなれてからは子育てに専念。ところが、何に対しても没頭しやすい性格だった福田さんは、子育てにおいてもつい子どもに構い過ぎてしまったそうで、その状況を脱するために手を動かしたことが手芸作家としてのはじまりでした。自分の作品を近所の雑貨屋さんに持ち込んで販売してみたところ、これが予想以上の人気商品に。追加のオーダーを受けていくうちに今度は「同じものを何度も作るなんておもしろくない」と思い立ち、勇気を出してあこがれの雑誌に作品を売り込むことを思いつきました。

 

あこがれの編集長に直接アプローチするなど、チャレンジ精神が功を結び、雑誌の世界へと活躍の場を広げることができたそうです。フェリシモとの出会いもそのころでした。すでにクチュリエとご縁があった、当時ミニチュアメーカーの社員だった上の妹(手芸作家の船本 勢津子)さんからご紹介を受けて「クチュリエ」のキットのデザインにも携わることになった福田さんは、船本さんとともに姉妹ユニットの「beads×2」を結成して、活躍の場をどんどん広げていきました。

 

負けず嫌いが磨いたマルチな技法

『クチュリエの種』と福田さんとのかかわりは創刊間もない第3号から。当時はオリジナルの作品とレシピを毎月10作品ほど紹介しており、そのすべてをbeads×2のおふたりが制作されていました。かなり大変だったのでは?と聞いてみると、「『クチュリエの種』は自由な表現を求められていたこともあり、のびのびと考えられて楽しんでやっていました」とにっこり。

 

以前、クチュリエで販売していたサンプラー刺しゅう。アルファベットや数字の図案も福田さんのオリジナル。

2018年からは、得意のクロスステッチの技法で福田さんの連載企画「クロスステッチの世界」がスタートし、人気を集めています。過去に掲載した作品のなかで印象に残っているものをたずねると「2023年1月号(第247号)で作った『サンプラー刺しゅうのミニタペストリー』です。蚤の市で見かけそうなアンティークな雰囲気を再現し、細部にこだわり、仕上げにコレクションの中のアンティークパーツを付けました」。

 

福田さんのアトリエには、布や、生地、素材や道具などが所狭しと並んでおり、夢見る少女の宝ものが詰まった子ども部屋のようでもあります。「小さなパーツやおもちゃみたいなものを集めるのが大好きで、これらは海外で買ったものなどもありますが、いちばん多いのは京都のお気に入りの雑貨やさんで買ったもの」だそう。北野天満宮や東寺の骨董市などをおとずれるのも好きでよく足を運んだり、最近はネットショップやSNSからも情報を見つけては購入することもあるとか。

布の中でも昔からリネンがお気に入りで、「かわいいな」と思うと購入してストックしているので、コレクションがどんどん増加中。特に、ストライプ柄には目がないのだそうです。

 

インターネットで購入したという什器の中には、ボタンやチャーム、リボン、レースなどがぎっしり。

ところで、ぜひお聞きしたい「beads×2」というユニット名の由来。それは、船本さんと姉妹ユニットを結成した当時、ビーズが流行っていたことおり、また、ビーズを連ねてつながっていくように手づくりを通じて人や仕事などさまざまなかかわりをつないで広げていきたいという想いから名付けられましたそう。

お互いが作ったものを持ち寄って品評会を開いたりと、切磋琢磨しながら創作に勤しんで来られたbeads×2のおふたり。船本さんの作品を見て、「かわいいやん!」とか、ときには「負けた……」と思うこともあって、それがよい刺激になっていたそうです。

 

ご自宅のリビングに並ぶ、しあわせな様子があふれる家族写真。

年齢を重ねても、息子さんのサポートでパソコンや携帯のスキルを学ぶのが楽しいという福田さん。手芸作家として歩み始めてから「できないと言いたくない」「何が何でもなんとかするぞ!」という熱い気持ちで作品づくりに向き合っているうちに、気づけば30数年、創作活動だけは未だに飽きることがないそうです。とってもチャーミングでおしゃれな福田さんが身に着けている服や帽子は、すべてご本人の手づくり。忙しい創作活動のかたわら、愛犬のタッフィーくんや息子さんのパートナーのお洋服を作ることもあるといいます。「時間ができたら、人形や服を作って着せ替え遊びをしたい」というピュアな気持ちを忘れない福田さんの若さの秘訣は、「よく食べること」だそうです。

 

お人形作りが好きという福田さん。忙しい合間にも、ときどき作っているそう。

「たとえ、技術が不十分でもアイデアで補えばいいというのが信条。『クチュリエの種』の初心者も楽しめるというコンセプトは、そういう私にぴったりだったので、今でも楽しみながらどんなことにも挑戦できたんです。おかげでいろいろな技法に出会うことができて、私が『クチュリエの種』に育てていただきました」とやさしくほほ笑んだ福田さん。笑顔もたたずまいもなにもかもがかわいらしく、それだけで魅力的な福田さんの創作活動がこれからも本当に楽しみです。

クチュリエプランナーに聞きました!

かわいい雑貨や材料を集めるのが大好き。

福田さんのアトリエには、珍しい海外のパーツやボタンなどがいっぱい。『クチュリエの種』の作品にも貴重なパーツを惜しげもなく使ってくれる、太っ腹で大らかなところも魅力です。 (テンちゃん)

 

 

イベント会場で……。

ふわっとやわらかい空気をまとった女性に遭遇。「素敵なご婦人だな」と思っていたら、福田さんでした。 展示会にもこまめに足を運んで感性を磨き続けていらっしゃる、その旺盛な制作意欲に改めて感動!(チャッピー)

 

 

間に合わないときは息子さんが配達員に。

『クチュリエの種』のレシピ作品を福田さんだけで対応いただいている時は、作品の締め切り間際に息子さんが慌てて届けにきてくれることも。ご家族がみなさん仲よしなのも魅力。(ルル)

 

おうちのインテリアにも手づくりが光っています。

手芸に限らず、必要なものをササっと作ってしまえる福田さん。ご自宅のキッチンカウンターや棚は木工が趣味のご主人作。福田ファミリーは、ご家族ひとりひとりが本当に素敵なクリエイターです。(ふるる)

 

 

福田とし子さん特集の続きは後編へ。

 

beads×2 (ビーズ・トゥー) 福田 とし子
手芸作家として30年以上、クチュリエとの付き合いも20年を超え、ひとつの技法にとらわれず刺しゅうやソーイング、編み物もこなす。京都を拠点に夫と愛犬タフィと3人暮らしで、食べるのもお酒も大好き。

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