編めば編むほどいとおしくなる、クラフトバンドのかごたち 〜前編〜

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さまざまな素材でかごやバッグのデザイン、制作を手がける、かご作家の古木明美さんにインタビュー。2回に分けてお届けします。今回は前編です。

偶然の出会いから、一生ものの仕事に。

愛らしく親しみやすいフォルムと、日常使いしたくなる実用的なデザイン。かご作家・古木明美さんが手がけるかごやバッグは、「作り方がわかりやすい!」「初心者でも楽しめる」「デザインが素敵」と多くのファンから愛されています。


古木さんが紙バンドによるかご編みに出会ったのは2000年。娘さんの幼稚園のママ友に誘われて、かご編みを習ってみたのがきっかけでした。
「初めて習ったのはシンプルな四角いパンかごだったのですが、編むだけでどんどん形ができていく感覚が本当に楽しくて、一瞬で夢中になってしまいました。気づけばもうひとつ、もうひとつと編み進め、やめられなくなってしまって」

編んだ作品をホームページで発表しているうちに、手芸店でかご編みの講師を頼まれるようになり、当時の紙バンドブームとも相まって、出版の依頼が舞い込みます。こうして「一生に一度の本」という気持ちで取り組んだデビュー本『エコクラフトカフェへようこそ!』(河出書房新社)が好評となり、テレビ番組や雑誌への出演、カルチャースクールの講師や海外でのワークショップもするように。今では22冊もの著書を発売する人気作家として、活動の幅をますます広げています。

やさしくて奥深い、かご編みの魅力。

古木明美さんのご自宅兼アトリエ

古木さんをはじめ、多くの人を夢中にさせる紙バンドのかご編みの魅力とは、どのようなものなのでしょうか?
「いちばんは、初心者でも、技術があまりなくても気軽に楽しめることだと思います。紙バンドはその名の通り紙でできているので扱いやすく、主な道具も洗濯バサミと木工用接着剤だけ。むずかしく思える編み地でも、藤などのかごに比べると比較的トライしやすいものが多いです。手を動かしていくうちに、だんだん自分の思い描いた通りのものができていくよろこびは格別のものがあります」

現在多数の著書本を出版している古木さん。本作りは、大変ながらも楽しい特別な仕事だと言います。
「ハウツー本でいちばん大切なのは『再現性』。いくら自分が気に入ったオリジナルデザインを考えても、初心者の方が私と同じように編めなければ本としては意味がないので、プロセス部分は順を追って特にていねいに紹介する、事前にスタッフの方に作品を作ってもらい難易度を検証するなど、『やさしく、楽しく』という初心を忘れないようにしています。その上で、古くからの読者の方にも楽しんでいただけるよう、テーマやデザインで新しさを出すように工夫しています。もともと教室で生徒さんに教える仕事が大好きなので、本を通して多くの読者の方にかご編みの魅力を伝えられる本作りも楽しいです。いちばんつらいのは……毎回大量の締め切りに追われることでしょうか(笑)」

左:紙バンドが並ぶ素材棚 右:ハサミやボンドなどの道具一式

長年かご編みを続けてきて、多忙な日々を過ごす中で、生徒や読者の方からの言葉に励まされることも多いそう。
「生徒さんから、『コロナ禍で外に出られず鬱々としていたけれど、かご編みを始めたらすごく楽しくて、おうち時間を明るい気持ちで過ごせるようになりました』『病気でからだが不自由になってしまったけれど、リハビリ代わりにかご編みをやってみたら夢中になってしまい、手を動かすことも全然苦になりません』などという声を聞くと、本当にうれしくて、この仕事を続けていてよかったな、と思います。完成させる喜びももちろんですが、制作自体に夢中になれる、我を忘れて没頭できる、というのもかご編みの大きな魅力のひとつだと思います。」

常に新作を発表し続けている古木さんですが、インスピレーションの源は?
「残念ながらここ数年はむずかしくなってしまいましたが、以前は毎年、ラトビアやフィンランド、インドネシアやベトナムなど、世界中のさまざまなかごを見る旅に出て、異国の空気やすばらしい文化にふれながら、刺激をたくさん受けていました。また、二匹の愛犬との散歩中に目にした花の姿など、自然のモチーフから新しいデザインが浮かぶことも。あとは、ひたすらアイデアの神さまが降りてくるまで、何もせずにぼーっと待つことも多いです(笑)」

後編では古木さんと一緒に企画したクチュリエのキットについてもご紹介します!

かご作家 古木 明美さん
2001年より作家活動を始める。紙バンドを中心にさまざまな素材でかごやバッグのデザイン、制作を行い、本や雑誌、テレビへの出演、カルチャースクールでの監修、海外でのワークショップなど幅広く活躍。ウェブサイト「ぷるる工房」主宰。現在22冊の著書を発売中。http://park14.wakwak.com/~p-k/

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