なつかしくて新しい偏愛ハンドメイド〜前編〜

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インパクト抜群なデザインと、どことなくノスタルジックなたたずまい。イラストレーター・さぶさんの手から生まれるパンチニードルやパッチワークは、いちど見たら忘れられない唯一無二の世界観が魅力です。古きよき昭和の時代からインスピレーションを受けて、まったく新しいものに生まれ変わらせる魔法のようなものづくり。ハンドメイドへのゆずれない「愛」がぎゅーっと詰まった創作の秘密に迫りました。

手芸の楽しさに目覚めるまで

幼いころから、手芸屋さんでかわいい布を探したり、小さな手芸を楽しんだりしていたというさぶさん。「同居していた祖母は、和裁も洋裁もできるスーパーおばあちゃん。私も習ってはみたものの、裁縫の世界ってまずは基礎をしっかり習得するところから始めるんですね。その、型通りにやるというのがどうにも性に合わず、いやでいやで(笑)、あまり楽しめなくて。絵を描くことも大好きだったので、進路はイラストの方へと流れていきました」

小学生のころに作ったブタのマスコットは今でも宝物。


卒業後はイラストレーターとして活動しつつも、自分らしいスタイルが固まりきらず、結婚や出産を経て、表現者としての道を模索する日々。そんなとき再び手づくりの楽しさを教えてくれたのは、わが子のために何かを作るという体験でした。

「下手でもいい、売れなくてもいい、純粋に作る喜びだけに浸れる!という、表現や仕事から解き放たれた場所での手づくりが本当に楽しくて。布のおもちゃや入園グッズ作りに夢中になるうちに、自分の中で新しい扉が開いたような気がします」
 

わが子のために作ったパッチワークの布おもちゃは、手づくりの純粋な楽しさを教えてくれた思い出の作品。

パンチニードルとの運命の出会い

 ある日、友人からパンチニードルを教えてもらったさぶさん。パンチニードルとは、毛糸などの糸を通した専用の針を使ってイラストを描くようにステッチをしていく技法。布の上に自由に自分の世界を表現することのできる楽しさに、すっかり夢中になってしまいます。

「海外の動画などを見て独学で仕組みを学び、見よう見まねで作っていきました。毛糸という新しい素材との出会いによって自分の表現がグッと広がったこともうれしくて」
 

まるで絵画のようなパンチニードルの作品たち。


完成したラグをSNSで発表したところ、予想外の反響に。すぐに原宿のギャラリーからオファーがあり個展を開催。大盛況に終わった後は、「ラフォーレ原宿」でもポップアップショップが決定。予期せぬ波に乗り、さぶさんの創作活動は再び活発に動き出します。

「手づくりの力ってすごいな、と改めて驚きました。きっとイラスト一本だったらこうはなってなかったと思う。ハンドメイドはいつでも生活のそばにある自然なものだから、こんなふうにたくさんの方に受け入れてもらえたのかなと思います」

パンチニードルは今でもさぶさんにとって柱となる表現手段のひとつ。海外からラブコールが届くなど、続々とファンも増えています。

「作業に取りかかるまでの時間が長いといやになっちゃうから、とにかく先に手から動かします。完成予想図は一応あるけど、絶対にその通りにはいかない。でも、いいんです。思い通りにならないところが、手芸のいちばんのおもしろさ。毎回、ああ、うまく行かなくて楽しいなー!って言いながら作っています(笑)」  <後編につづく>
 

パンチニードルに使う毛糸はすべて昭和時代のデッドストックを使用。

 

イラストレーター・ハンドメイド作家 さぶ

1987年神奈川生まれ。イラストの専門学校を卒業後、古道具の世界に入り、2012年よりイラストレーターとして活動。主に水彩を使った絵のほか、パンチニードルやパッチワークなどのハンドメイド作品も多数発表。2021年、作品集『もしかしてハンドメイド』(自費出版)を発表。 Instagram:subchanforever

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