手を動かし続ければ、新しい風が吹く|アッチコッチバッチ高橋彩子さん【前編】

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世界中から集められた民族衣装の端切れや装身具などを組み合わせて生まれた、世界にひとつのバッチたち。自由で力強い色と形、にぎやかな佇まいは、まるで予想もしていなかった現在の自分の姿を楽しみながらおしゃべりしているようにも見えます。作り手は、「アッチコッチバッチ」の高橋彩子さん。バッチを作るようになった経緯から現在のものづくりに込めた想いまで、たっぷりとお話を伺いました。

旅と出会いがはぐくむ一期一会のものづくり

小さなころから教育番組の「ノッポさん」にあこがれていたという高橋 彩子さん。当時通っていた絵画教室の先生の影響も大いに受け、手を使って何かを生み出すことに夢中な少女時代を過ごします。

卒業後に勤めた会社を退職した後は思い立ってメキシコへ。そこで師となるモニカさんと運命的出会いを果たします。
「彼女はティテレス(パペット)を作り、脚本も自分で書いて、人形劇の公演を行うアーティスト。アトリエを窓からのぞいたら小学校の図工室のような空間で、まさに大好きだったノッポさんの世界! 初めて会ったその日に『手伝ってよ!』と笑顔で誘われ、その場で快諾してしまいました」

ひと月の旅のつもりが、気づけば1年半の滞在に。日々人形を作ったり、舞台を手伝ったり。メキシコでの豊かな経験は、今も高橋さんを支える糧になっています。

ある日の作業机の風景。素材の豊富さに比べ、使う道具はハサミと針と糸通しのみ、とシンプルです。

帰国後に再び働き始めた高橋さんですが、そのころお母さまを病気で亡くし、つらく悲しい日々を送ります。ある日、お母さまの荷物から箱を発見。それは、学生時代に高橋さんがひとり旅から持ち帰ったお土産を入れたものでした。

「タイやベトナムの布やポーチなど、いろんなものが入っていました。ポーチをぼんやり眺めていると、大量生産かもしれないけれど、刺しゅうなどのディテールには作り手個々の思いが宿っているのを感じて。なぜかふと「切ってみようかな」という考えがよぎり、ハサミを入れてみたところ、楽しくて、気持ちよくて、母を亡くしてからずっと止まっていた自分の心が動き出すような感覚がありました。集中力が高まり、神経が研ぎ澄まされて、一種の興奮状態というか……、切ることがやめられなくなってしまったんです」

細かいパーツは国や地域ごとに分類して引き出しで保管します。
世界中から集められた古布の数々。最近は海外に行って素材を集めることがむずかしいため、信頼のできる現地の知人に送ってもらっているそう。

切った端切れを眺めているうちに何か作りたくなり、手縫いで布を組み合わせ、ブローチのピンを後ろにつけてみたら、なんだかしっくり。これが「アッチコッチバッチ」の第一号になりました。

雑貨店などを中心に年一度のペースで発表するうちに、徐々に人気は広がり全国区へ。「まだまだ、ぜんぜん……」と笑う高橋さんですが、確実にバッチファンは増えています。

後編につづく

アッチコッチバッチ

高橋 彩子(さえこ)さん

「日常でも非日常でも、ここにいてもどこにいても旅を感じていたい」をコンセプトに、タイ、中国、インド、アフガニスタン、メキシコ、スペインなどで出会った世界中の布や装身具を組み合わせ、ひとつひとつ手縫いでバッチを作っている。相棒は猫のメー。


Instagram:bacchiworks_saeko

HP:www.saekotakahashi.com/

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