年中無休でニットを愛すセーター屋さん〜後編〜

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前編に引き続き、mouhenさんが編むセーターのお話をお届けします。

 

「セーター屋さん」のしあわせ

2021年の冬、ある作品展を鑑賞するため「April Shop」というスペースに足を運んだmouhenさん。そのとき自作のセーターを着ていたことが糸口になり、はじめての展示会『会いたいセーター』の開催が実現します。「『展示してみない?』とお声がけいただいてからSNSのアカウントを作り、作品を編みため、友人たちの力を借りながらmouhenの世界観をつくっていきました。初めてのこの展示会に、驚くほどたくさんの方々がお越しくださって、それぞれのセーターが、不思議なほどぴったりな人のもとへと旅立っていきました。制作期間中は、ひとり黙々と編み続けているので、作品についていろいろと聞いてくださることがうれしくて、とても充実した時間になりました」

 

町の小さな手芸店で見つけた年代物の毛糸たち。mouhenさんの編み物にはかかせない宝物。

編み図を書かず、作りたいイメージを心に描きながら直感で編み上げる独自のスタイルは、まさに唯一無二。「その展示である方に『どこかの国の誰か知らないおばあちゃんが編んだようなセーターですね!』って言われたんですが、それが自分の理想とも言えるので、すごくうれしかったです」と回想します。

余った毛糸は付いていたタグと一緒に保管。昔の毛糸はタグのデザインもユニーク。

 

そんなmouhenさんのイメージソースは、クラフト感のある古着や、昭和の手芸本。「昭和のハンドメイドは、時間と素材の使い方が潤沢で豊かなんですよね。柄は、好きで集めている昔の毛糸を主役に決めることが多くて、量や強度が足りないときは、新たな糸をミックスするなど、編み方も材料も自分流に工夫しています。これとこれを組み合わせたらどうなる? と実験を楽しむ気分で編んでいて、そこから得られる刺激にいつもわくわくしています」

 

毛糸は持ってるだけでもかわいいけれど、やはり編んでこそ。セーターも作品ではあるけれど、服だから着て楽しめるのが魅力。「セーターって、着る人の年代を問わないし、普遍的なものだという思いが『会いたいセーター』を経てより強くなりました。絵を買って飾ることにハードルの高さを感じる人もいるだろうから、私は作ったものを着てもらえるセーター屋さんになれてよかったと改めて感じています。ここにたどり着くのに時間がかかったけれど、これまでやってきたことや好きなものが全部、ひとつにつながっている気がしています」

素材やデザインなど、贅を尽くした昭和の手芸本は見ていて飽きない。

そんなmouhenさんがこれからトライしてみたいことはなんでしょう? 「一年に一度は作品を発表できるように、セーターを編み続けたいです。また、古い本からインスピレーションを受けながら制作をしていますが、できればその記録と物語を一冊のZINEにまとめたいと構想中です。さらに、私が生み出したセーターが、私の手からはなれて新たな物語を紡ぎ、私が愛してやまない古着のセーターのように、世界のどこかで大切に受け継がれる存在になれれば最高です」

 

mouhenさんにスマホポシェットを作っていただきました!

毛糸を複数本混ぜて編んだり、途中で毛糸を足したり引いたり……mouhenさんの編み物のアイデアはとっても自由。シンプルな編み地でも、その毛糸遣いのアレンジで、なんとも言えない繊細な奥行きが生まれて、作品が絶妙にかわいくなるのです。みなさまもこのスマホポシェットを参考に、お好きな色のハーモニーを見つけながら、自由に編み物を楽しんでみてくださいね。
◆スマホポシェットの編み図はこちら
◆使用した毛糸:創作意欲が湧いてくる 映えるカラーの毛糸玉セットの会

 

セーター屋 mouhen

美大卒業後、将来に迷っている最中に編み物に出会う。介護をきっかけに30歳で看護師に転職。働きながら独学でセーターを編み始める。2022年よりmouhenとして活動を開始。2023年1月、東京「April Shop」にて初めての展示会『会いたいセーター』を開催。

Instagram:@mouhen_knit

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