人さし指の先にちょこんとおさまる、ショートケーキやデニッシュパン。リアルなディテールとファンタジックな世界観に、胸のときめきが止まりません。作り手は、クレイアート界の第一線を走り続ける関口 真優(せきぐち まゆ)さん。たくさんのミニチュア作品に囲まれながら、いろいろなお話をうかがいました。
小さな世界の大きなときめき
少女時代はシルバニアファミリーが大好きだったという関口さん。なかでもお人形に合わせて作られた小さな食べ物や食器などに胸をときめかせていたといいます。 「結婚して時間ができたときに、大好きだったミニチュアを樹脂粘土で作ってみることにしたんです。当時は本などもあまりなかったから、さまざまなの手法を調べて取り入れたり、思いついた方法を試したりしながら、趣味として楽しんでいました」
作品をブログに載せて発信してみたところ、すぐに出版社から書籍化の申し出が。こうして2008年、関口さんはクレイアート作家としての一歩を踏み出します。精巧で愛らしい作品は大きな話題となり、テレビや雑誌などのメディアで「スイーツデコレーション作家」として紹介されるように。
「当時は、果物やスイーツをホイップクリームなどで飾るスイーツデコがはやっていて、私も携帯電話のストラップやアクセサリーの作り方などをたくさん紹介しました。自分で手づくりしたものを持ち運べるうれしさ、というものがみなさまに喜んでいただけたのかもしれません」
その後カルチャースクールの講師を経て、粘土のミニチュア作りを教える個人のスタジオを設立。関口さんの確かな技術とわかりやすい指導が注目され、現在は海外でのレッスンのラブコールも届くようになりました。
「私の職業は、『作り方を教える人』、そして『粘土のミニチュアの楽しみ方を発信する人』。だから、本を買ってくださった方やレッスンに参加された方が必ず作れるような指導を、ということは常に意識しています。レッスンで初心者の方とお話しすると、『ここでつまずく方が多いんだな』『ここの説明はもっとていねいにしたほうがいいな』などと気づくことがたくさんあるんです。学んだことは、必ず次の仕事にフィードバックするようにしています」
デビューから16年たった今もますますファンは増え続け、この春には19冊目の著書が出たばかり。常に新しいアイデアを出し続ける秘訣はどこにあるのでしょう?
「時代とともに樹脂粘土の世界も変化しています。16年前は、作品を持ち歩いたり身につけたりして個人で楽しむスタイルが主流でしたが、今は作品を自分でスタイリングして撮影し、その世界観ごとSNSでシェアするという楽しみ方が増えてきています。だから私も、正方形の世界を意識したり、ミニチュアを飾る什器の作り方も紹介するなど、ニーズに合わせた提案を考えるように。世の中の動きに合わせて提案を考える仕事は、大変だけどやりがいがあります。ただ、時代が変わっても変わらないものがあって、それはミニチュアの持つ説明不要の圧倒的なかわいさ(笑)。ただ『小さい』というだけで、無条件にワクワクして心がときめき、眺めているだけでしあわせな気持ちになってしまう……。私自身、どれだけ作っても飽きないし、毎回ときめくし、まだまだ世界中に知らないスイーツがあるから作ってみたい。クレイアートの可能性は無限大だと思っています」
関口 真優さんのミニチュアクラフトの世界、続きは後編で。
クレイアート作家 関口 真優さん
「関口 真優クレイアートスタジオ」代表。ミニチュアスイーツやフード、パン等の制作に携わり、樹脂粘土の楽しさをグローバルに発信している。『関口真優のミニチュアスイーツショップ』(河出書房新社)ほか、著書多数。
Instagram:@_mayusekiguchi_
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