今回も、前回に引き続き、ニット作家でアーティストの今村曜子さんのインタビューをお届けします。
「好き」が世界を豊かにしてくれる
「私は成長フリークなんです。いろんな情熱がマグマのように湧き上がってきて、自分でも止められないの!」と笑う今村さん。毎日のように作品を編み続けながらも、絵を描いたり、聖歌隊の一員として歌ったり、新しくフルートを始めたりと、さまざまなことに挑戦し続けています。料理や美術、数学や建築にも造詣が深く、ときには専門書をまるごと一冊手書きで書き写すほど勉強にのめり込むことも。とめどなく沸き続ける情熱と好奇心は、まるで大きな泉のようです。
「勉強って本当におもしろくて、異なる分野に思えても学んでいくとどこかでつながっていたりするし、お互いにインスピレーションを与え合うこともあります。医学書にあった細胞の写真からニットのデザインを思いつくこともありますし、バックミンスター・フラーの建築からヒントを得て、多面体のバッグを編んだこともあります」
これだけ多彩な才能にあふれる今村さんが、幼少期から今まで変わることなく人生の中心にすえ続けている編み物。改めて、その魅力はどういうものなのでしょう。
「一時期は、編み物をやめて絵を描くことに集中しようと思ったこともありました。でも、やめられなかった。気づいたら手が動いて、何かを編み始めてしまっているんです。編み物は、ただ一本の糸と針だけで作り出す、究極的にシンプルな世界。技法の種類も多くはないですし、手さえあれば、どこででも、誰にでもできるものです。それなのに可能性は無限に広がっていて、どこまで行っても終わりがない。だからこそ、永遠に飽きないのかもしれませんね」
ワークショップの現場などでは、生徒さんから「どうすればもっとよいものが編めるようになりますか」と聞かれること多いそう。そういう時、今村さんがいつも相手に伝えているというメッセージを、最後に教えてくださいました。
「編み物って、基本はすごくシンプル。最初はむずかしく感じても、継続すればある程度の技術は必ず身につきます。だけど大切なのは、そこから先のセンスの部分。ここは技術では補えないし、自分自身がそのまま出てしまう。センスを磨くには、感性を磨くこと。感性を磨くには、感動を貯蓄することです。いろんなものに興味を持って、心をたくさん動かして、自分自身を掘り下げていく。こうして『好き』を取捨選択していくと、ずっと変わらない自分にとってのクラシックが最後に残ります。それがきっと、編み物においてもあなた独自のセンスを形づくってくれるはず。どうぞ、自分の『好き』を楽しんでくださいね」
ニット作家/アーティスト 今村 曜子
幼いころから手づくりに慣れ親しみ、1985年よりオリジナルニットの制作を始める。1989年に渡米し、カリフォルニア美術大学で美術を学ぶ。ニューヨーク滞在をへて帰国し、ニット作家として多数の作品を発表。著書に『メリヤスこま編みのあみこみバッグ』(アップルミンツ)ほか多数
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