手づくり愛を夫婦でつむぐ刺しゅう小物

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美しい手刺しゅうの花が咲く、がまぐちやポーチ、ファブリックパネルなどの小物たち。夫が刺しゅうを、妻が仕立てを担当している夫婦のユニット、Awj handmadeさんによる作品です。クチュリエで販売中のキットも大人気のおふたりに、創作の秘密について伺いました。

 

「好き」が輝く分業スタイル。

「ひとりの女性作家によるブランドだと思っていらっしゃるお客さまが多くて、夫婦だとわかると驚かれるんですよ」と笑うおふたり。刺しゅうを夫の淳さんが、その布を使った仕立てを妻の明日香さんが担っている、手芸作家の世界でもなかなか珍しい夫婦のユニットです。

 

「いつでもどこでもできる気軽さが刺しゅうの魅力」と淳さん。リビングの座いすも定位置のひとつ。

 

手芸とは無縁の世界で生きてきたという淳さんが刺しゅうを始めたきっかけは、手づくりが大好きな明日香さんの付きそいで大型手芸店を訪れたこと。 「何気なくのぞいた書籍コーナーに並んでいた、ハンガリー刺しゅうの本が気になって。以前から何か新しいことを始めてみたいと思っていたので、トライしてみることにしたんです(淳さん)」

 

 

本と動画サイトを頼りに、完全な独学で刺し始めた淳さんですが、天性の才能を発揮し、最初の作品から明日香さんも驚くほどのできばえに。そこから徐々に刺しゅうの世界にはまっていき、短期間でオリジナルの図案を起こすほどになったそう。

 

全体を一度に刺せる大きなサイズの枠を愛用。布に型がつきにくいように、枠の内側は布でくるんで。

「最初のお手本がシンプルなサテンステッチだったこともあり、初心者でも比較的スムーズに刺せたのかもしれません。子どものように夢中になれる没頭感や、想像以上に素敵に刺せたときの達成感は何ものにも変えがたく、すっかり夢中になりました(淳さん)」

 

作業中の作品に使う道具類はボックスにまとめて持ち運びやすく。

 

以前から布小物を作るのが趣味で、オークションサイトを中心に不定期で出品していた明日香さんですが、淳さんの刺しゅうの腕を見込み、徐々に共同で作品を作るように。オリジナリティーあふれる手刺しゅうと、使い勝手よくていねいに仕立てられた作品にはすぐファンがつき、毎回新作を待ち望まれるようになっていきます。

 

配色を決める作業は、唯一夫婦共同で行う大切なプロセス。図案はすべてデジタルで製作。

 

夫婦で制作を始めて5年がたったころ、クチュリエのキット監修という仕事を受けたことをきっかけに、家族3人の頭文字を合わせた「Awj handmade」というブランド名を考案。ふたりは新たな一歩を踏み出します。

「今までは、一点ずつその都度販売するやり方だったので、キット監修は初体験。なかでも苦労したのは配色で、自分たちの好きな色だけでなく、毎月異なる色合いをバランスよく楽しんでいただけるように熟考を重ねました(明日香さん)」

 

おふたりの苦労が花を咲かせ、初監修のキットは大人気に。この秋に登場したウール刺しゅうのキットも、さっそく人気を集めています。

 

お互いの個性を尊重しあって。

洗練された図案と、ニュアンス漂う上品な配色。実は淳さんの刺す花は、大まかなモチーフはあるものの、実際には存在しない架空の花が多いのだそう。 「参考程度に図鑑を見たりもしますが、そのまま刺しゅうに反映はせず、必ず自分のフィルターを通すようにしています。頭の中のイメージから自由な表現を生み出す作業はとても楽しいです(淳さん)」

 

整然と片づいた作業机。明日香さん愛用のミシンはJUKIのもの。
リネン類は木製の箱に見やすく収納。

 

一方明日香さんは、より実用的なデザインを求めて試行錯誤の日々。なかでもがまぐちは、使いやすいと評判の代表作です。 「夫の刺しゅうを美しく生かすデザインは大前提ですが、あくまで日用品なので、使い勝手は重要。常にベストなサイズ感やパターンを探っています(明日香さん)」

 

友人からのプレゼントやお子さんの作品など、手づくりがいつも身近に。
スーパーのチラシ(!)を使った遊び心あふれるバッグは、お子さんの通う園の作品展用に明日香さんが作ったもの。

 

ときには意見をぶつけあったり、笑いあったり。おふたりの姿からは、お互いを深く信頼している様子が伝わってきます。

「もちろん納得のいく助言はありがたく受け入れますが、どうしてもふたりの意見が平行線になってしまったときは、毎回妻が折れてくれるんです(笑)。私を信じて好きなようにさせてくれる度量の広さにいつも助けられています(淳さん)」

「私は、毎日刺しゅうに没頭している夫を、すごいな、よく続くなぁ……といつも感心しながら見ています(明日香さん)」

 

完成した作品はオリジナルの箱に入れて納品。

 

最後に、上手に刺しゅうを完成させるためのアドバイスを伺いました。 「集中して刺していると、視野がせまくなり全体がゆがんでしまうので、私たちのキットの場合はお花から刺し始めるのがおすすめ。ポイントを先に完成させておけば、後がらくだと思います。最初はむずかしくても徐々に慣れてくるので、楽しみながら刺してみてくださいね(淳さん)」

 

Awj handmade
明日香さん(左) さん(右)
夫が刺しゅう、妻が仕立てを担当する、夫婦のハンドメイドユニット。2015年よりがまぐちやポーチを中心とした雑貨の制作を始め、2016年には手刺しゅうによる布小物の制作、2021年からは夫婦で本格的な作家活動をスタート。草木染めの布を使った作品も制作中。

Instagram:@awj_handmade

 

Awj handmadeさんの図案をGET!

Awj handmadeさんが表紙作品を特別制作した『クチュリエ2022-’23年秋冬号』が全国の書店・コンビニで発売されています。図案も掲載されているので、ぜひチェックしてみてください。

 

 

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