手をかけたぶん愛おしい 心をあたたかくする手づくりの魅力 ~刺しゅう作家マカベアリスさん~

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前回に引き続き、刺しゅう作家・マカベアリスさんのインタビューの最終回は、刺しゅうに対する思いや魅力について語ってくださいました。
マカベさんは、図案の目新しさや技術を誇示するようなめずらしいステッチではなく、シンプルでも植物の生命力を表現したい、とおっしゃられます。刺しゅうに惹かれた理由は、「ひと針ひと針時間がかかるけれど、手間をかけたぶん愛おしい。絵と違って、刺しゅうはできあがると立体感が出て、手のあたたかみにふれ、なでたくなる」からなのだそうです。

「手づくりの魅力って、まわりの人を喜ばせることができることだと思うんです。ちょっとでも手をかけたものは相手の心をあたたかくしますよね。とくに家事や育児、介護など手を使うことが多い人こそ、苦しい時に手を動かすとラクになれると思います。私も14年前、家族の闘病を経験したんです。その時にしていた編み物にとても救われて……。不安や恐怖でいっぱいだった頭の中がラクになった。手を動かすことは、精神や頭のお休みになるんだなって気づいたんです」。

刺しゅうを美しく仕上げるためのコツ

裏側で中指をあて、針の刺し位置をアシストできるので便利

「私はいつもこの10㎝の刺しゅう枠を使っているんです」。10㎝という片手で持ちやすいサイズが、刺しゅうを刺し進めるときに裏側から中指の腹をあてて、運針をアシストすることができる。特に、サテンステッチの時にこの効果が絶大で、きっちりすき間をあけずに等間隔で刺し埋めることができるそうです。刺しゅう枠が小さい分、刺した刺しゅう部分を枠でつぶすこともありますが、あとからアイロンなどをていねいに当てればそれほどダメージはないそう。

「でもフレンチノットだけは最後にやります。刺しゅう枠でつぶすと元に戻らないので気を付けてくださいね」。ふだんはおおざっぱな性格だとおっしゃるマカベさんですが、刺しゅうになるときっちりするタイプなんだとか。「ひと針でもうまくいかなかったら、戻る決断は早くしたほうがよいですね。なんとかなる、が結局なんともならないので、違和感を感じたらすぐにほどくようにしています」とも教えてくれました。

アトリエから見る夜明けが好き

マカベさんがふだん作業をするアトリエもとっても魅力的。自宅マンションのひと部屋をアトリエにしています。いちばん北側の部屋なのに、前の建物の白壁に光が反射して、日中はとても明るくなるそう。「もともとは娘の部屋だったんですけれど今は独立しましたから。直射日光が入らないので、ちょうどよいんです」。

作業する時間は家族がまだ寝ている朝4時から。「真っ暗なうちからだんだんと光が差し込み夜明けを迎える時間が好きなんです」。朝の時間は頭が冴えて、作業に集中できるそう。使い込まれたものに興味があると言い、アトリエのタンスなどは近所を巡って出会った古道具たち。そこには生地などが色ごとに整頓されてしまわれています。ファイルもシンプルに統一されて収納されており、とにかく整理整頓が行き届いた、作業がしやすそうな素敵なアトリエです。

壁に飾られた刺しゅう作品は、油絵用のキャンパスをパネルとして使用していて、マカベさんの作品の大切なアーカイブとなっています。

クチュリエコラボのキットに込める想い

最後にマカベさんから、クチュリエとのコラボキットに込めた思いとメッセージをいただきました。

「この6枚の作品は、頭文字が合わさると『garden[ガーデン]』とひとつの単語になるシリーズもの。それぞれに花の名前が刺しゅうされ、ひとつだけでもかわいいし、6枚そろえる楽しみもあります」。

そして「このキットのよいところは、図案があらかじめ印刷されているところ。みなさんやっぱりいちばん苦労するのが図案を写すことではないでしょうか。きれいな図案は作品に影響しますから、私もふだんからきれいに描くようにしています。刺しゅうが好きな人、お花が好きな人、いろんな方々に楽しんでもらえるキットになっていますので、ぜひ手にとっていただけるとうれしいです」。

刺しゅう作家・マカベアリスさんの全3回のインタビュー、いかがでしたか。
興味を持たれた方は、「マカベ アリスさんのアルファベットと植物刺しゅうのクロスの会」をぜひ手にとって体験してみてくださいね。

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