ガーナスタディツアー~チョコレート工場見学で知ったカカオの危機
本当は午前中はガーナ政府のカカオ関係者とごあいさつ、そして、日本向けカカオ豆の農薬検査の視察だったそうです。
遅刻です。
私はチョコレート工場見学という楽しそうなところからの参加です。
ガーナにもこういうところあるんだと思うような、いわゆる工場地帯にニッチェという会社の大きなチョコレート工場がありました。
ちょっと前まで、ガーナにはチョコレートをフィニッシュまで作る工場はなかったのです。やっぱり原料で売るよりも、絶対フィニッシュまで作って売った方が儲かるのです。
ニッチェの代表の方は言っていました。チョコレート産業が上げる利益が15兆円に対して、ガーナとコートジボワールがカカオを売って得られる国家歳入が150億円と桁違いに少ない。
自分たちでそれを変えていこうとしています。
アメリカのウィスコンシン州にも工場を建てるそうです。
頑張ってるーーー!
ちょっとアメリカのチョコがおいしくないから乗り込む的な、面白いことも言ってました。
クーラーも効いてて「うちの工場はソーラーパワーを使っている」と。確かにこの国の電力ではなかなか安定的に工場は動かせないでしょう。
最先端な巨大工場で、カカオの生産についての見学は進みました。説明を聞く東洋人を後ろから見てる工場の若者たちが初々しく。「ガーナのチョコを世界に送ってね」と未来を感じたのでした。
私は巨大工場には無縁なんです。
なんと言っても世界の秘境のローカルチョコレートを担当しているもので。
今回のツアー参加者の仲間は本当にいろいろなチョコレート関係者で構成されています。カカオの原料に関わる人がこう言ってました。
「絶望的ですね」
え? 何が?
工場が動いていない、と。
え? なんか見せてくれたじゃない。
その人の話によると、工場は止まっていると。私たちが見たのは生産ではなく機械が動いていただけで、チョコは作ってなかった。ガーナでもカカオがないんだ、と。今や高額でもお金払ってカカオが手に入るだけましな状況で、とにかくカカオがないんだと聞きました。
工場の社長は明るかったし、私はガーナでもチョコレートができるようになって良かったねと。そう思ってたんですが。世界のカカオ不足は危機的な状況だというのは聞いてはいましたが、生産国でそうだったら、そりゃ市場にはないですよね。
なんでないか?
もちろん「異常気象」と言ってしまえば、みんなそれで納得するかも知れませんが、そればかりではないようです。
農業離れや、カカオの木の老朽化。金の採掘による畑の消滅やら。それはそれはいろいろな問題が今のカカオ不足を招いているそうなんです。
それを解消する案は、もうカカオの生産地をアフリカからアジアや南米に変えてしまうとか、そういう話になってきます。そうすると世界全体のカカオの生産量が圧倒的に少なくなるので、チョコの値段がすごく上がってしまいます。子どもが買えないチョコになります。
もしくは代替カカオを作るとか。これもきっとできるでしょう。今より安く作れるかも。今やお肉も豆から作ってしまいますから技術的には可能でしょう。でも、カカオの農家さんがますます食べていけません。
どちらにも言えることが、もし一度そうなってしまったら、もう元には戻らないということです。これに関しては単純な答えでは解決できないと思います。
本物のチョコがなかなか食べられなくなる日がすぐそこまで迫っているかも知れません。
つづく
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チョコレートバイヤーみり
フェリシモでのチョコレートバイヤー歴28年。「チョコで世界中を笑顔にしたい」と世界各国のショコラティエをめぐり、数々のレアチョコを発掘。これまでに訪ね歩いたショコラティエは34カ国約400件。約590ブランド・約2,900種類のチョコレートを輸入販売した実績を持ち、その中でも日本に初上陸させたチョコレートは329ブランド。チョコのストーリーを語らせたら止まりません! まだ知られていない素敵なチョコを紹介するため、今日も世界の果てまでチョコ探し!
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